アントニオ・ネグリへ
私たちは、「早大文学部ビラ撒き逮捕」事件【2005年12月20日、映画サークルの青年が文学部構内でビラを配布していたことを理由として文学部教員集団に逮捕拘束され警察に引き渡された事件。ビラの内容は早大内の自治スペースの破壊に抗して闘った活動家3名への構内立ち入り禁止処分に反対する集会への参加を呼びかける穏健なものであり、青年は無抵抗のまま、10名程度の警備員・教員に暴力的に連行された】に抗議し、署名活動・早大当局への抗議行動、シンポジウム・集会、情宣活動などを行っている「2005年12月20日早大文学部ビラ撒き不当逮捕抗議署名事務局」です。
この度、来春あなたが来日する予定であり、早稲田大学においても講演を行うとの情報に接して、それを機会に、この書面を提出することにしました。ご検討の上、回答いただければ幸いです。
○私たちは、不当逮捕直後より早大当局に対する抗議署名を集めています。
現在、早稲田大学を中心とした日本の学生・知識人をはじめ、海外からのものも含め1300名以上の署名を集めております。
●あなたにもぜひご署名お願いしたい。
ちなみに、あなたの協働者であるマイケル・ハートからは事件直後の2006年に署名に賛同をいただき、この問題に関連して私たちが支援者とともに出版した書籍『ネオリベ化する公共圏』(明石書店)にも、「市民社会の衰退」を再録、それに付して「早稲田大学の逮捕に対する追記」という文章を寄稿していただいております。
○また重要なのはこの事件に対する早稲田大学の教員の反応が著しく鈍いという事実です。私たちは、多くの専任教員に対して最低限での、しかし多様な共闘を提起してきましたが、多くの専任教員は、協力を拒否しています。このことに規定されて、また、私たちの力量不足から、学生の対応も署名以上のレベルでは十分とは言えません。
早稲田大学というのは5292名の教員を擁する日本最大規模の大学ですが、この事件に対して専任教員から表立ってなされた反応は、事件直後の教員有志七名による公開質問状と意見書のみに過ぎません。警察権力の導入という事件の重大性を鑑みるとき、異常な反応の少なさ、弱さであると言わざるを得ません。
そして珍妙なことに、この問題に対する協力を拒否し、理事会・教授会の言論弾圧に直接・間接的に加担している専任教員の中には、学外では憲法九条(不戦条項)改悪反対、イラク戦争への日本政府の加担に反対するといった活動にコミットしていたり、ネグリさんの著作を授業で紹介したり、自分の論文で引用したりして悦に入っている反体制気取りの教員も相当数存在しています。
ネグリさんの著作を自分の論文でブリリアントに引用したりすることが、現場での闘争のサボタージュを正当化し、自分の反体制知識人としての存在を担保する免罪符になってしまっているのです。そしてそれはアカデミック・キャリアのステップアップのためのハク付けにもなるので、彼らにとってはまさに一石二鳥というわけです。
彼らの存在が、ビラを撒いていた人間を警察権力に引き渡すような大学当局を下支えする重要な構成要素であることはいうまでもありません。
この問題は早稲田大学だけの問題ではなく、日本の大学全てが多かれ少なかれ抱えてしまっている問題といえます。
現在、日本の大学ではすさまじいまでの理事会経営側の専横、教員・学生管理、警察力の安直な導入【2006年3月14日 法政大学で集会を開こうとしていた学生・支援者29名「威力業務妨害」で逮捕、2006年1月6日 大阪経済大学で学生・支援者6名が「傷害容疑」で逮捕】がおこなわれています。
そして多かれ少なかれ、各大学において、ネグリさんの著作を読み、学生に紹介し、イラク戦争反対の署名には協力するような「反体制」教員達が、足下の学内の問題には沈黙し(そしてある場合には積極的に当局に加担し)、そのような大学当局の自治破壊、警察力の安直な導入、処分などを乱発する学生管理強化等を下支えしてしまっている状況があります。そのような管理体制のもと、多くの学生は、漠然と疑問を抱きつつも沈黙しているのが現状です。
● 2:上記状況を踏まえた上で、何らかコメント・連帯アピールのような一文をいただけないでしょうか。また、来日の際は、我々の早大当局に対する抗議行動へもぜひ ご参加いただければ幸いです。
ネグリさんが我々とともに早稲田大学に登場することは、日本の反体制運動に大きなインパクトをもたらすことでしょう。
2007/08/19
早稲田大学文学部ビラ撒き不当逮捕抗議署名事務局
絓秀実・花咲政之輔編
『ネオリベ化する公共圏――壊滅する大学・市民社会からの
自律』(明石書店)1500円+税、4月26日刊
序論 ポスト自治空間
――2005年12・20早稲田大学におけるビラまき逮捕をめぐって
絓秀実(文芸批評)
第1章 公共空間の変容と監視社会
学問の自由と合州国のファシズム化 酒井直樹(コーネル大学)
シニシズムの原理としての機会原因論 池田雄一(文芸評論)
市民社会の衰退
付:早稲田大学での逮捕に関する追記 マイケル・ハート(デューク大学)
第2章 サブカルチャーの監視・管理化
演劇教育の退廃
――からだの解き放ちから遠く離れて
宮沢章夫(劇作家)
「エロ」から始まる 松沢呉一(ライター)
第3章 大学空間の壊滅
政治による大学の破壊
――〈都立大学問題の場合〉
初見 基(都立大学)
大学の廃墟で―80年代の個人的経験
小倉虫太郎(評論家)
シンポジウム 大学改革と監視社会
武井昭夫(評論家)×笹沼弘志(静岡大学)×入江公康(社会学者)
×花咲政之輔(太陽肛門スパパーン)×絓秀実、
井土紀州(映画監督)+木村建哉(成城大学)
早大文学部ビラまき不当逮捕を許すな!
早稲田大学2005年7月22日集会実行委員会
大学自治年表
編者あとがき
「大学改革に異議あり!早稲田ビラ撒き不当逮捕を問うワークショップ」は
無事に終了いたしました。
多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。
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